
土地探しと家の関係性 | ひびよし不動産 家づくりへの想い
皆様、こんにちは。
ひびよし不動産です。
今日は、少し時間をいただいて、私達が普段どのように建築と向き合い、そして、これからの私たちの住まいや環境がどうあるべきかについて、お話ししたいと思います。
家を建てること、あるいは住まいを選ぶことは、人生における非常に大きな決断です。
しかし、私たちは往々にして、目に見えるデザインや間取り、あるいはカタログに載っている機能性ばかりに気を取られてしまいがちです。
もちろんそれらも大切な要素ではありますが、私たちが建築という行為を通して皆さんに一番お伝えしたいのは、もっと根本的な、「人間と地球(土地)との関係性」についてです。
少し長い文章になりますが、私たちがこれからどんな空間で、どのように生きていくべきなのかを考える一つのヒントとして、お付き合いいただければ幸いです。
地球(土地)のディテールに耳を澄ます――住宅が建つ前の話
私たちが建築の計画や土地探しの依頼を受けたとき、すぐに図面を描き始めることは決してありません。
新しいプロジェクトが始まるとき、私たちが最初にすることは、その土地に何度も足を運び、ただひたすらに自然の振る舞いを観察することです。
何度も足を運び、周辺の地形や近隣の建物影響、その場所の気候風土、すなわち「肌に感じる気候・環境」を徹底的にリサーチします。
私たちがまず知りたいのは、その土地の「ディテール:細やかな表情」です。決して駅からの距離や資産価値ではありません。
春にはどこから暖かな風が吹き込んでくるのか。
夏、最も暑い時間帯の太陽はどの角度から照りつけるのか。
秋の夕暮れ、冷え込みとともに空気はどう沈み込んでいくのか。
そして冬、身を切るような北風をどのように防げばよいのか。
雨が降れば水はどの尾根から集まり、どの谷を伝って流れていくのか。
地下水脈はどこを走り、その水温は一年を通してどう変化しているのか。
湿気や土地の匂いはどうか。
これらはすべて、地球がその場所で見せている固有の表情です。
世界中、どこを探しても全く同じ気候風土の場所など存在しません。
隣り合った土地であっても、地形がわずかに異なれば、風の抜け方も光の入り方も変わってきます。
建築とは、本来、こうした土地のディテールを読み解き、その土地が持つ自然の営みにそっと寄り添うようにかたちづくられるべきものです。
土地が語りかけてくる言葉にじっと耳を澄まし、自然のシステムを深く理解すること。
それが、私たちの建築計画や土地探しのすべての出発点になります。
「動く素材」と「動かない素材」――自然の振る舞いをかたちにする
皆さんは「建築の素材」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
木、石、土、あるいはコンクリートや鉄、ガラスといったものを想像する方が多いと思います。
これらは「動かない素材」です。
しかし、建築にとってもう一つ、絶対に欠かすことのできない重要な素材があります。
それが、風、水、太陽の光と熱といった「動く素材」です。
地球上のすべての生命は、この「動く素材」の恩恵・影響を受けて生きています。
そして建築もまた、動く素材と無関係に存在することはできません。
私達は建築計画や土地の選定において、この動く素材をいかに美しく、かつ理にかなった方法で建築や住宅に取り込むかということをいつも考えています。
たとえば、風の通り道をデザインすること。
夏の涼しい風を室内に導き入れるためには、単に窓を大きくすればよいというものではありません。
風がどこから生まれ、地形にに沿ってどう流れ、周辺の建物の隙間をどう流れてくるのかを理解し、その風を迎え入れるための開口部を設けます。
そして、入ってきた風が室内の熱を奪いながら、どこへ抜けていくのか。
その空気の道筋そのものが、建築の断面や平面の形状を決定づけていきます。
また、太陽の光や熱も重要な動く素材です。
夏には深い庇(ひさし)を出して厳しい直射日光を遮り、冬には高度の低い太陽の光を部屋の奥深くまで導き入れて、土間や壁などの「動かない素材」に熱を蓄えさせる。
夜になれば、その蓄えられた熱がじんわりと放射されると、室内を暖かく保ってくれます。
「動かない素材(手で触れることのできる素材)」である木や石、コンクリートは、「動く素材(目に見えない・触れられない素材)」である風や光を受け止めるために存在しています。
自然の振る舞いを邪魔するのではなく、物体としての建築(壁や床、屋根、天井等)の素材を通すことで、風や光の存在をより鮮明に、より心地よく人間の五感に届けることができます。
現代の住宅が忘れてしまったもの――機械に頼らない豊かさとは
さて、現在の日本の住宅事情に目を向けてみましょう。
技術の進歩により、現代の住宅は驚くほど気密性や断熱性が高まりました。高効率なエアコンや空気清浄機が導入され、ボタン一つで一年中、室温を24度、湿度を50%に保つことができるようになりました。それは確かに、ある種の「快適さ」をもたらしてくれました。
しかし、その一方で、私たちは何か大切なものを忘れていないでしょうか。
外は猛暑でも、雪が降っていても、家の中は常に同じ温度。風の匂いを感じることもなく、太陽の光の移ろいに心を動かすこともない。
それはまるで、自然から人間を完全に切り離し、一番心地が良く、満足させてくれる、自然の風や太陽の光の恩恵を受けられない状況へと自らを追いやっている住宅を数多く見かけます。
もちろん、現代の過酷な気象条件の中で、機械設備を完全に否定するつもりはありません。一程度の断熱性・気密性・機械に頼ることは必要です。
しかしこの文章を書いている私自身も自然の風より心地のいいエアコンの風を体感したことがないのも事実です。
本来、私たちが感じる「心地よさ」や「豊かさ」とは、もっと多様で奥深いものです。
夏の夕暮れ時、庭に打ち水をしたあとに縁側を通り抜ける、ほんのりと土の匂いを帯びた涼やかな風。
冬の朝、障子越しに差し込む柔らかな光が、冷え切った部屋をゆっくりと温めていく気配。
そうした季節の移ろいや自然の移り変わりを全身で感じ取ることこそが、人間が生物として本来持っている喜びであり、住まいの豊かさの本質ではないでしょうか。
自然を拒否するのではなく、まずはその土地の自然が持っている力を最大限に活かす工夫をする。
本来機械や断熱材の力に頼るのは、それで足りない領域だけでよいはずです。
過去の知恵から学び、未来へつなぐ――久留米・鳥栖・小郡・朝倉・大刀洗での体験から
私たちがこれから参照すべきは、決して新しい技術の中だけにあるのではありません。
実は、その答えの一部は、私たちの祖先が長い年月をかけて培ってきた知恵の中にすでに存在しています。
その土地の歴史や人々の営みに触れるたびに、昔の人々がいかに自然の振る舞いを深く理解し、それに寄り添って生きてきたかに驚かされます。
たとえば福岡の古い民家を見ると、南側には大きく開かれた縁側と深い庇があり、北側には小さな窓しかありません。
これは、夏の強い日差しを遮りながら南からの海風を取り入れ、冬の冷たい北風を防ぐという、気候風土に完全に理にかなった形です。
また、集落全体の配置も、夏の通常気象時の盆地の弱い風がきれいに抜け、家々を冷やすように計算されています。
しかし昔はもちろんコンピューターによるシミュレーションなど持っていませんでした。
しかし、何世代にもわたって自然を観察し、失敗を繰り返しながら、その土地で最も快適に生きるための「最適解」を導き出してきたのです。
私たち建築や不動産業に携わるものがすべきことは、こうした過去の知恵を単にノスタルジーとして懐かしむことではありません。
先人たちが持っていた「土地のディテールを読み解く力」を受け継ぎ、それを現代の科学的知見や技術と融合してアップデートしていくこと。それこそが未来の子供たちに豊かな住環境を残す近道だと私たちは信じています。
これからの家づくりで、皆さんに大切にしてほしいこと
もし今、この記事を読んでくださっているあなたが、これから家を建てよう、あるいはリノベーションをしようと考えているなら、一つだけお願いしたいことがあります。
それは、カタログに載っている数字やスペックを見る前に、まずはあなた自身がその土地に立ち、自然の振る舞いを体感してほしいということです(できれば一緒に土地見に行きましょう)。
間取り図を眺めて「ここにリビングを配置しよう」と決める前に、その場所で一日を過ごしてみてください。
朝の光はどこから入ってきますか?
お昼過ぎ、一番暑い時間帯に日陰になるのはどこですか?
夕方、心地よい風はどの方向から吹いてくるでしょうか?
雨が降ったとき、水はどう流れますか?
できれば多くその土地を訪れてみてください。
そして、その土地が持つ「動く素材」をどのように自分の暮らしに取り入れるかを想像してみてください。
駅までの距離や資産価値、道幅も大事です。
しかし、そこだけを見ている人や住宅会社・不動産会社がいかに多いことでしょうか。
そこだけを見て進めていくと、偶然いい設計者に出会える以外に、救いの道はありません。
土地探し不動産探しのスタートの時点で、建築・住宅における『環境』の価値を理解している不動産会社や建築会社と二人三脚で進めることの重要性がここにあります。
家は、単なる家事や身支度をする機能的な箱ではありません(もちろん動線計画は大事です)。
人間が自然や外部と緩やかに接し、豊かに人間性を回復させてくれる場所です。
窓を開け放てば風が通り抜け、光と影が美しく、雨音さえも心地よく感じられる。
そんな風に、自然の移ろいとともに呼吸するような住まいと、機能性や動線計画に優れている住まいを両立してつくることは、決して不可能ではありません。

おわりに――「土地に認めてもらえる家」を目指して
建築をつくるということは、言い換えれば、地球や地域社会という巨大な生態系の中に、自分の都合で人工物を置くという行為でもあります。だからこそ、私たちは常に謙虚でなければなりません。
私が常に目指しているのは、「土地に認めてもらえる建築」です。
もし土地が意志を持っていたとして、その住宅を見たときに「ああ、これならここに建っていてもいいよ」「私の風や水の流れを邪魔せず、むしろ美しく活かしてくれているね」と言ってくれるような住宅。
地球の自転や公転、海流や大気の循環といった途方もなく大きなサイクルのなかに、そっと置かれる建築。
皆さんがこれから建てる小さな住宅であっても、その心は同じです。
一つ一つの家が、その土地の風と水と太陽を敬い、土地のディテールに寄り添うように建てられれば、私たちの街はもっと美しく、もっと豊かな場所になるはずです。
私たちが住まう家が、自然から切り離されたシェルターではなく、地球の一部・地域の一部としての誇りを持てる場所になること。
そして、そこに住む皆さんが、日々移り変わる風や光の中で、生活の喜びを深く味わえること。
それこそが、現在の建築や住宅に最も必要であり、大切にされなければならないものだと、私たちは強く信じています。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
皆さんのこれからの住まいづくりが、土地や地域社会との豊かな対話の始まりとなることを願っています。
ひびよし不動産では土地探しや家づくりに対する疑問や不安を一つずつ丁寧に解決しながら進めていきます。
オンラインでも対面でもまずはお気軽にご相談ください。
